- 吉田哲士:プロカメラマン
写真歴35年にして考える 絞り開放撮影して失敗した話。
こんにちは、「フォトネコ」の吉田です。
高校の写真部から本格的に写真を始め、またプロカメラマンとして広告写真撮影に携わって25年になりますが、先日失敗してしまいました。
絞り開放で撮影!?
何を失敗したかと言うと、絞り開放で撮影をしてしまった事です。
これを聞いて、ピンとくる人とそうで無い人に直ぐ分かれると思います。
最近流行っている⁈ ところの、絞り開放の一点ピント的な撮影をミラーレス一眼でよくしている人は「?」
フィルム時代からのカメラ歴が長めのひとは「!」
ではないかと思います。
広告写真ではレア
実は私が主に撮影している、広告写真の世界では絞り開放での撮影は皆無と言って良いほど、ほぼ無い!のです。
その理由として、モデル撮影にしても、商品撮影にしても、売る為に見せたいモノを広告写真では撮るので、かなり雰囲気寄りのイメージでも、クライアントとしては、その商品は少なくともハッキリと見せたいのです。それとカメラマン的にもフィルム時代は結果がすぐに見られない事もあり、深めの被写界深度が得られる用、絞りを少なくともf8以上、f11~16が普通です。
政治家先生も参加のパーティーで(汗)
で、今回の失敗はというと、政治家やお偉い先生方も参加していた、とあるパーティーの集合写真撮影でした。
会場は都内高級レストランのさほど広く無い、むしろ約30名の集合を撮るには引きのない狭い会場でした。
会場は薄暗く、しかも天井、壁が濃い緑!
スナップ撮影では勿論クリップオンストロボを使いながらも、環境光(定常光)も生かしたいのでiso800 1/50 f2.8設定。私の古いCanon 5DMKIIですとノイズの心配から、これ以上は感度を上げたく無い心境なので、手ブレに気をつけながらEF16〜35mmF2.8L USMズームレンズの開放値f2.8で撮影してました。
パーティーの途中、偉い先生方も全員揃ったので、集合写真の撮影です。
グリップオンストロボ2台をそれぞれスタンドに取り付けて、アンブレラをセットしグループの両サイドに設置しました。
狭い会場で何とか2列になっていただき、私は反対側の壁にベタ付きの位置へと下がり距離をかせぎましたが、ズームを16mmにしないと全員がとても入りきれません。勿論画面ギリギリでは無く、左右に画面1/4程は余裕があります。
目ツブリの心配も有りますので、計4枚を撮影。皆さま程良い笑顔で良かったのではと思いました。
その後2時間ほど、パーティー終了までスナップ撮影して帰りました。
事件発覚!
さて、事件は翌日の画像セレクトをしている時です。 撮影した集合写真を見ていると、向かって1番右手前の男性がボケたように写っています。撮影時に少し動いたのかな?被写体ブレかな?などと思い2枚目3枚目とチェック。しかしながら4枚目まで全て、何故かこの1番右の方がボているのです!!!まさかゴースト???冗談はさておき、なぜこの方1名のみがボケてしまっているのか全く理解が出来ず、拡大してよく見ました。
逆に反対側、1番左の方はどうなのか? ふつうにピントは来ています。 もしかしたらレンズに汚れでも付いていたか? すぐに昨日使用したレンズの前玉と後玉を見てみましたが、特に影響が出るような大きな汚れは見当たりません。
撮影データを見直しました。 Iso640 シャッター速度1/50絞り2.8 ……..
そう、暗い部屋でスナップ撮影を最初にしていて、少しでも定常光を利用しようと絞り開放のf2.8で撮影したままでした。 今となっては、現場でどう判断してそうしたのかは覚えてませんが、焦点距離は16mmで被写体まではなんとか3m程はかせぎましたので、2列に並んだ参加者の方々全員にはピントはくると判断してたハズです。
えっ!?まさか・・・
このレンズの絞り開放撮影の解像度がここまで酷いとは想像せずに撮影を 永年していました。
今更ながら愕然としました。まだまだ勉強が足りないな〜と・・・
キヤノンさんに 文句を言うつもりはないのですが、このレンズ約10年前に新品購入した時は、たしか20万ほどしていたと記憶しています。勿論赤線入りのLレンズだし、プロ機材として信頼して良いレンズかと思っておりました。その時までは・・・
最初にお伝えしたように、広告写真では開放で撮るような案件はこれまでほとんどなく過ごしてきてしまい、実際に解像度チェクのチャート撮影などしてのレンズテストをした事はありませんでした。これが盲点でした。
結局そのボケた部分を画像処理をして何とか難を逃れ、無事納品に至りましたが、私個人としてはどうにもモヤモヤ状態でした。
新しいレンズはどうなのか?
そんなタイミングの時、別件の撮影を2チームで行わなければならない案件が来たので、レンタルにて2014年発売の比較的新しいEF16-35mm F4L IS USMを借りました。折角なので、簡単にレンズ比較テストをしました。
同じf4設定にして撮影した画像を見比べると、何と新しい16−35mmF4のレンズの方が周辺近くまで断然シャープなのです!
ただ、まぁ無理も無いです。私のレンズは初代16-35mmで2001年発売。最新型は2016年発売のEF16-35mm F2.8L III IS USM 、既に3代目のレンズですからね(笑)
EFレンズの歴史をチェックしてみた。
Canon Camera Museumサイトで過去商品の詳細を確認したところ、この初代16-35mmが発売された2001年はちょうど415万画素 APS-HサイズのEOS 1Dが750,000円で発売された年でした。
CanonのEFレンズは1987年に発売された記念すべき初代EOSであるところのEOS650 35mmフィルムカメラと同時に産声を上げました。 完全電子マウントでオートフォーカス駆動用や絞り制御用モーターのレンズが内蔵されこれまでのFDレンズとは全く違うEFマウント用レンズとしてEOSシステムの根幹をなす実用レベルのオートフォーカスレンズです。
世間一般、プロの世界ではデジタルカメラなんてまだまだ先の話でしょー、なんて言っていた頃の事です。
その時代に発売されたレンズは、やはり今で言うところのデジタル対応では決して無かったかのではないかと思います。
今度Canonのプロサービスに質問してみたいと思いますが、改めてどの年代からのレンズがデジタル対応設計として発売されたのか? フィルムとデジタルの違いを考えました。
Canonサービスへ問い合わせ
キヤノンお客様相談センター、メール担当のSでございます。
- お問い合せいただきました件でございますが、おおよその目安として、デジタルカメラへの移行期である1999年以降、デジタルカメラで発生しやすいゴースト、フレアを抑制する設計のレンズを発売しています。
- 2001年発売の[EF16-35mm F2.8L USM]も、デジタルカメラに最適化したレンズ形状やコーティングを採用しております。
- ※もし確認をご希望のレンズがございましたら、個別にお調べさせていただきますので、具体的なレンズ名をお知らせください。
との事でございます。
う〜ん、そうなんだ〜。としか言いようはなかったです。
さすがCanonさん、製品には落ち度はないようです。近々自分でも手持ちのレンズチェックをしてみますので、また報告しますね!
絞り開放での撮影。事前にレンズチェックをお勧めします。
それでは、良い 写真ライフを!
Have a good one!