- 吉田哲士:プロカメラマン
「ファインアート」モノクロ建築写真のすすめ
こんにちは、「フォトネコ」の吉田です。
普段何気なく見ている建物もドラマチックな作品としての建築写真になります。
ファインアートとしての写真
フォトねこの吉田です。皆さんは建築写真には興味があるでしょうか?
きれいなモデルや可愛いペット、美しい風景の写真は多くのSNSでも素晴らしい作品を沢山見かけますが、建築写真はまだまだマイナーな、特に日本では部類かと思います。
海外のサイトでは頻繁に目にするファインアート、モノクロ写真も日本ではやはり少ないですね。
これは日本の文化として、残念ながらまだ写真がアートとしてあまり認められていない!からだと思います。
日本での写真は、どちらかというとドキュメンタリーの色が濃く、いわゆる美術館で飾られる様な作品はまだ全体的に少ないです。
私もSNS、インスタグラムやフェイスブックで作品を投稿するのですが、特にモノクロ写真の時は海外の方からの評価が圧倒的に多く、日本人からの反応はあきらかに薄いです。
そんな背景もあり、日本でももっとファインアートとしての写真、モノクロ写真だけではないのですが、モノクロ写真の方がよりアートな写真として捉えやすい事もありますので、今回は身近な被写体でもある建築に的を絞って、撮影の仕方から仕上げまでを紹介したいと思います。
被写体としての建築物
建築好きの方なら、何処に魅力的な建築があって、建築家が誰なのか、など把握しているかと思いますが、自分含め、詳しくない人が大半かと思いますが、ネットで検索すればすぐにそういった建築マニアの方のブログが出てきます。
もし東京にお住まいなら、「都内歴史的建造物」のキーワードで検索をかけましょう。
東京都都市整備局のサイトで東京都選定歴史建造物一覧に100近くの建物の詳細データを見る事が出来ます。
もしかしたらお近くにも何件かあるのではないでしょうか?
以前からその近くを通る度に「古そうなビルがあるな~」なんて思っていた建物が実は選定歴史建造物かもしれません!
そうなるとテンションも上がり、撮影意欲も湧いてくる!ではないですか。
改めてその建物を間近で見ると、さすがに選定歴史建造物だけあって趣や重厚さを感じるかと思います。
あとはその建物がより良く見える時間帯、太陽の位置を考えて撮影するのみです!
スマホのアプリで太陽の位置を把握しよう!
私が無料で使用しているアプリ、「日の出、日の入」は大変便利で、地図上にポイントを置くと、日の出、日の入りの方向、時刻が簡単に確認できます。
銀座8丁目の静岡新聞東京支社を実際に撮影したのは2021年5月25日の10:42でした。
このアプリのお陰で、多少遠い撮影の時でも撮影したい建物にがおおよそ何時位が一番良いか予想が立てられます。
これまで撮影してきた経験では、やはり太陽は逆行ではなく順光、しかも少し斜光気味!がその建築物の立体感を良く表せる光かと思います。
建物によっては日の出早々になったり日の入り間近の時間帯になったりもしますが、影になってしまっている状態を撮影しても結果に期待はもてないので、そこはかなり重要なポイントです。
勿論晴れの日で有ることは当然です。
実際の撮影
時間には余裕を持って、少し早めに現地に行きましょう。いくらアプリで正確に撮影時間を見積もっても、実際には見てみないと分かりません。
撮りたいと思っていたアングルも正面が良いと考えていたのに、建物側面を入れてのアングルの方がダイナミックに見えたりするものです。
撮影スタイルは人それぞれかと思いますが、通常、動かない被写体の時はやはり三脚を使用して、ISO感度も低め、絞りもそのレンズの解像度が最高になるf8~16にセットするのがやはりベストです。
一般的な広告建築写真では水平垂直を守る事が大変重要です。
素人とプロの差はまずここで出ます。最近のカメラには水準器が内蔵されているので、大変重宝しますが、注意点としては実際使って見ると水準器の設定が甘く、少しずれていても合致状態の表示がでます。
カメラの水平水準を厳密に出すのは実際難しく、三脚を使用していても正確には出来ません。
何故なら、多くの三脚はロックを緩めた状態から締めた状態にすると、その時点で雲台が微妙に動くからです。
その為多くの建築写真のプロは高価なギア雲台を使用しています。
モニターにも方眼のグリッドを表示してわずかな誤差を確認しながら水平垂直出しを行います。
ただし!そう今回撮影しようとしている建築写真は広告用ではなくファインアートを目指しているので、正直水平垂直は気にしないで大丈夫です。
建物全体をフレームに収める必要もありません。建築写真では定番の広角レンズでなくても、望遠で部分を狙っても構いません。
全くの自由です。
私の場合は部分の幾何学的な美しさを狙うのではなく、やはり広角ズーム16-35mmを使用するケースがほとんどで、建物全体的を見て美しいアングルを探ります。
私の撮影スタイル
ここに作例として掲載した写真をみて気づいた人もいるかと思いますが、写真の雲に特徴があります。
これは通常長時間露光をした時に、雲が露出中に動き、流れたようになる現象です。
雲の動く速度にもよりますが、露光時間3分~5分でこのように流れた雲になります。
夜間撮影なら露光時間3分~5分は問題ないです。
カメラをバルブにセットして時間を測るか、私はタイマー付きに電子レリーズを使用して長時間設定をします。
242秒 f16 ISO50 ND1000フィルター使用
ただ、日中ですといくら低感度の50、100辺りのISO設定と絞りf22に設定してもせいぜい1/15~1/4秒位にしかなりません。
そこで使用するのがNDフィルターなのですが、特に濃いND1000、10段分の減光ができる真っ黒なフィルターです。
ただこのND1000を持っても先ほどのフィルター無しでのシャッタースピードが1/15位の場合は10段減光してもやっと60秒です。
理想の3分/180秒にはなりません。
更にND4を重ねて装着して4分/240秒ですが、フィルターを重ねるのはよほどな高価なフィルターでない限り、解像度の低下に繋がりますので、おススメはできません。
私はまだ使用した事がないですが、ハイアマチュアやプロが最近注目して使用しているKANIやNISIの高級角形フィルターであれば大丈夫な気もしますが、フィルタ-ホルダー含めたセットが8万?!とかレンズが購入できそうな金額です。
なので、私も最初はND1000で頑張っていましたが、ここ最近フィルターは使用せず、カメラも実は手持ちで三脚無しで撮影しています。
ドラマチックな雲、理想的な空には中々出会えない
実際、撮影日が晴れているだけでもラッキーなのにさらに丁度良い雲、しかもほど良い速度で移動している雲、となるとかなり確率は低いかと思います。
そこで私の場合、雲はもう最初から期待せず、フォトショップで作る事にしています。
実際に撮影してない事でがっかりされる人も中にはいるでしょうが、私はこのスタイルです。
長時間露光は好きなのですがところリスクは多いです。180~300秒の露光中にカメラが動いてしまったり、太陽が急に雲に隠れたり、なんて事は良く有ります。
風が強い日は三脚も大型の重いのが必要になりますので、当然移動も大変です。
また私は露出を自動ブラケットで適正露出から上下2段の3枚撮影するので、実際に長時間露光をしていたのでは正直日が暮れてしまい、アングル変えての撮影ができなくなってしまうからです。
この写真は有楽町の交差点の中で信号が青のタイミングで撮影しています。
長時間露光での撮影は不可能な場所です。
撮影データの調整
データはライトルームで基本調整をします。
撮影時に必ず露出ブラケットで3枚撮影しているので先ずはHDR処理でシャドウ部の潰れとハイライト部が飛ばないように調整です。
モノクロ調整もライトルームで行います。
ライトルームのモノクロ調整は元のカラー毎にそれぞれ調整ができるので、モノクロに変換した時のコントラストを考えながらコントロールします。
基本調整とおおまかなイメージ調整が済んだ時点でフォトショップに移行します。
フォトショップでの作業
フォトショップでの作業詳細はまたの機会にいたしますが、大まかな内容は
- 空部分のキリヌキ
- 黒い背景の制作
- 雲ブラシでの雲制作
- 移動フィルターで流れる雲の制作
- その他、建物の部分的なマスクでグラデーション処理
といった内容です。
フォトショップを理解している人は挙げた項目だけでだいたい理解できるかと思いますが、初心者の方用にはまた次回説明しますので少しお待ちください。
建築家が具現化した建物は美しいものが多いです。
是非皆さんのセンスで、その魅力部分を引き出して作品に仕上げて下さい。
海外のSNSで高評価も期待できますよ!
それでは良い写真ライフを! Have a good one!
フォトねこ吉田でした。
キャンバスプリントにして飾るのもおススメ!
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